第3回
軽いゴムを探せ
1988年にゼロ・ウェットスーツをスタートしたとき、セド科学より軽いゴムを製造している会社を探したら、今も使っているナショナル・ボンドのナショナル・ゴムに行き着いた。おれの信念は、サーフィン用のウェットスーツは軽くなければいけないっていう、考えなんだ。
ところが、その当時は、ダイビング系ウェットスーツメーカーがすごい力を持っていて、今もそうなんだけどね、軽いゴムはへたるからダメなんだって決めつけているわけ、そんなゴム、使えませんって。それで、おれはナショナル・ゴムに「軽いゴムを作ってくれませんか」って持っていったところ、「いやー、そんなゴムは使えないですよ」って断られたんだ。
でもおれは「自分のところで使うから、それでもいいっ」て言ったんだ。それで作ってもらったら、案の定、できあがると、よそのものよりすごく軽いんだよ。それ以来、おれは「軽いウェット、軽いウェット」って言っていたら、いまではダイビング用のウェットも軽いんだよ。軽さが主流になってしまった。
でも、ダイビング系ウェットスーツメーカーが言っている「へたる」っていうのは水圧のことなんだ。ダイバーは10メートル、30メートル、100メートルも潜るから、100メートル潜ると10気圧もの圧がウェットスーツにもかかるから、ゴムがぺっちゃんこになっちゃうんだ。10mm厚のゴムが2〜3mmの薄さになっちゃう。ゴムがペッタンコになると、当然寒いわけだ。
そのうち、ある研究レポートについて話すけど、保温力というのはゴムの厚みなんだ。ゴム厚が厚ければ厚いほど保温力がますというレポートがある。つまり、10mm厚のゴムが2〜3mmの薄さになったら、当然寒いということなんだ。ダイビング系ウェットスーツメーカーの連中は「へたる」というのは品質の悪さにつながるので、いやだっていうわけよ。
でも、おれたちサーファーは海の中には潜らなからさ、せいぜい波に巻かれても水深2メートルぐらいだから。それにすぐに上ってくるから、水圧なんか関係ないじゃない。それよりもおれたちは陸上で着ているのとおなじような環境にあるわけで、言ってみれば、雨の中でサーフィンしているのとおなじだからさ。
重いウェットスーツなんか、着る必要がない。とくに、波に巻かれたらなるべく早く海の上に上がりたいわけだから、軽いほうが良いに決まっている。それで、ナショナル・ゴムをさんざん口説いて、軽いゴムを作らせたんだ。そしたら、いつのまにかみんな、ダイビング系ウェットスーツメーカーまで軽いウェットをつくりはじめていた。今は、動きやすくて、柔らかくて軽いゴムで良くなったんだ。今はどこもそういう生地を使いはじめているんだ。