45年を超える、ウェットスーツ作り一筋の川南正が独白する人気コーナー、「OUR FACTORY」第20回「箱ミシンって、何だ?」を更新しました。
潜水道具としてのウェットスーツ
箱ミシンの話をする前に、ウェットスーツというギアがどういうふうに考案されたかについて、それが事実かどうかわからないけど、おれの知っている範囲で話してみたい。過去に潜水用具としていろいろなギアが開発される中で、洋服でも良かったんだけど、水がしみ込む洋服を着ても保温力がないので、最終的に水を吸わないゴム板が開発され、ゴム被服の潜水用具を最初に作るわけなんだ。戦前は、タイヤのチューブのようにゴムと布を張り合わせたもので作っていた。薄くちぎれないゴム板を布と張り合わせて、それを洋服にして縫い合わせて潜水のときに使っていた。いちばん最初は軍事目的だったのだろうね。戦後になって、アメリカやドイツがネオプレンゴムの開発をはじめた。ゴムだけだと保温力がないので、ゴムの中に気泡を混ぜることによって保温力を持たせるというアイデアでネオプレンゴム、発泡したスポンジゴム板が開発されたんだ。毛糸のセーターなどは空気を含んでいるから、着たときは暖かいが水を吸ってしまう。イギリスのピーターストームなどのオイルスキンのセーターは油を含んでいるから、普通のセーターと違い水がしみ込みにくいので、水夫たちが着ていた。それと同じようにゴム板だけでは保温力がないので、ゴムの中に気泡を入れた、保温力のあるネオプレンゴムを開発したわけだ。それはなぜかというのは、冷たい水の中に入るためのものであって、要するに潜水用具として開発されたのがウェットスーツなんだ。ウェットスーツを開発した当初はネオプレンのゴム板を、縫製をせずにパーツをただ張り合わせてひとつの洋服のようなものを作ってウェットスーツに仕上げたんだと思う。「OUR FACTORY」につづく。
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