第9回
ゴム(ネオプレンゴム)の柔らかさは軟化剤で決まる
日本の熱発泡のゴムは、ゴムを柔らかくするために軟化剤(可塑剤:アメリカでも使用)をゴムの原料に混ぜて製造している。そのために空気が入ってなくてもゴム自体が柔らかい。でも、ゴムに混ぜた軟化剤は水に溶けだすという性質がある。
30年以上前にそれが問題となって、たしかPCBが問題になったあとあたりに問題となったんだ。軟化剤はビニールホースや車のタイヤ、当然ウェットスーツにも含まれている。だから経年でだんだん硬くなってくるけど、問題なのはビニールホース。水道水に軟化剤が溶けだして、その水を飲めば身体の中に入ってしまうわけ。
ビニールホースも古くなると硬くなってぽきぽき折れでしまうからね。でも、最近は話題にもならなくなっているし、いまでも軟化剤が使われているから、体内に蓄積されていても排出されたりして人体に影響が少ないということがわかったんだろうね。
軟化剤をたくさん入れれば、柔らかいゴムが製造できる。柔らかいゴムが作れるのは良いんだけど、きちんと発泡しきれていないゴムをウェットスーツなどで使ったりするとシュリンクする、縮んじゃう。つまり、やせ細るというゴムが多いし、使っているうちに縮むし硬くなるという問題が出てくる。
だから、おれとして(ゼロ・ウェットスーツとして)はどうしたら良いのかなと考えると、なるべくゴムの中にきちんと気泡が入っているゴムを探して、メーカーにそれを要求して作らせることによって、耐久性のあるゴムが使えるようにするということなんだ。いまはナショナルというゴムメーカーを使っているけど、気泡にかんしては要望が無視されている。
なぜなら、ウェットスーツを作っているメーカーはサーフィン屋だけじゃなくて、ダイビング屋が主な取引先なんだ。さらにいえば、ダイビングのウェットスーツを作っているメーカーがサーフィン用のウェットスーツも作っている会社が非常に多いんだよ。
もともとサーフィン用のウェットスーツを作りはじめたのはダブやうちなど数社しかないんだ。ダイビング屋のノウハウはそれなりに生きていて、彼らにとって、ウェットスーツのゴムの中に気泡が入っているのは、逆に弱点なんだよね。気泡は水圧でつぶれるから、保温性が弱くなるわけだ。
だから、彼らは気泡のないゴムを欲しがるんだ。メーカーとしては、ダイビング用とサーフィン用のゴムを分けて製造するなんて、少ロットすぎて面倒くさいし、コストも高くなる。たしかに一部の高級品は分けて生産しているけどね。でもおれみたいにゴムの素材に関してうるさく言うメーカーなんて、99.999%いないのが現状なんだ。
写真はシャークスキンのネオプレンゴム。フラットスキンに型押ししてある。